おおやアート村全体構想   (2012年3月策定)

 おおやアート村構想の概要

 目的

  養父市大屋町を対象に、まちの歴史、文化、自然といった地域資源を活用し、まち全体をアートで結ぶ仕組みをつくることで、訪問者も住民も、関わる人皆が「つくる」「まなぶ」「たのしむ」ことができる、他にはない「アート村」を計画することを目的としています。

 背景

公募展「木彫フォークアート・おおや」

「木彫フォークアート・おおや」 養父市では、1994年から木を素材とした公募展「木彫フォークアート・おおや」を毎年開催しています。日本文化の原点ともいえる木を素材とした私たちの生活に身近で親しみやすい、温もりや安らぎを与えてくれる全国公募の作品展です。    
同公募展の木村重信審査委員長は「フォークアートのフォークは「人びと」の意で、フォークソング(民謡)とかフォークロワ(民俗学)とかいったように用いられる。フォークアートは人びとの生活に密着し、その喜怒哀楽を表現する芸術である」と説明しています。今では木彫作家への登竜門として位置づけられ、受賞することでその作家は注目を集めるまでになっています。
優秀作品は市が買い取り、現在では105点の木彫作品が養父市コレクションとして、養父市立木彫展示館に収蔵・一般公開しています。この実績を活かして、木彫フォークアートが大屋のアイデンティティとなるような広がりのある計画ができます。

大屋在住作家の活動とおおやアート協議会取り組み

 養父市大屋町には、木彫、木工、陶芸、絵画、書、染織、さをり織りなど多彩な作家が創作活動をしています。1996年からは町内の作家たちが合同で「うちげぇのアートおおや」を毎年、開催しています。ふるさと交流の家「いろり」や木彫展示館などにアート作品の展示やワークショップなどを開催し、期間中は多くの美術ファンで集落が賑わっています。また、同地区では、2008年4月に空き家の3階建て養蚕住宅を改造して、アート作品を展示する分散ギャラリー「養蚕農家」が開設するなど、大屋地域には芸術資源(人・モノ・行事・情報)が多く集積してきました。
2010年5月には、市民と関係団体の有志や行政で「おおやアート村協議会」が発足しました。2010年度に兵庫県のまちなか振興モデル事業を受けて「おおやアート村推進プラン」の策定や兵庫県立美術館での木彫フォークアート展、アート体験ワークショップなど開催し、おおやアート村構想の普及啓発の活動をしています。そして2013年1月に協議会を解散し新たにNPO法人おおやアート村として事業継承して活動を続けています。

大屋の地域資源

 養父市大屋町は、兵庫県北部の但馬地域に位置し、四方を県下一の高峰である氷ノ山をはじめ1,000m級の山々に囲まれた自然豊かな山里です。氷ノ山を水源とする大屋川が町の中心を流れ、支線沿いに集落が形成されています。古くから養蚕業が盛んだったことから、その名残の養蚕住宅の特徴を持つ民家が多数点在しています。
 大屋地域には、加保坂のミズバショウ(県指定天然記念物)樽見の大ザクラ(国指定文化財)天滝(日本の滝100選)横行渓谷(氷ノ山後山那岐山国定公園)、ブナ原生林などといった県下一級の自然資源や明延鉱山の一円電車、探検坑道などの近代化産業遺産群、大杉ざんざこ踊り、若杉ざんざか踊りといった無形文化財、おおや高原の有機野菜やおおや有機農業の学校の環境創造型農業の取り組みなど、質の高い地域資源が分布しています。これらの資源を地域づくりに活用するべきものと考えています。

おおやアート村全体構想


 前述した、「木彫フォークアート・おおや」の実績や在住アーティストの活動、豊かな地域資源の活用を基礎として、「つくる」「まなぶ」「たのしむ」アート村を計画しています。
 
 

アート村の中心拠点施設「BIG LABO」とアート村ネットワーク

 おおやアート村「BIG LABO」を中心施設と位置づけます。 
「BIG LABO」は、おおやアート村の「つくる」「まなぶ」拠点とし、芸術文化に関わるワークショップやイベントを企画し、プロデュースを行う役割を担っています。住民と共同で地域資源を活用したアート村ネットワークを構築し、情報発信を行っていきます。

おおやアート村BIGLABO

自然・歴史・産業・文化といった大屋の地域資源はかけがえのない宝物であり、多様性と可能性に満ちています。「BIG LABO」を中心に情報発信を行い、これら地域資源をアートと結びつけることで、新しい価値や広がり、つながりをつくり出していきます。

おおやアート村ネットワークの中に、幾つかのミュージアムプログラムを構築し、このミュージアムプログラムは、特定の地区を対象にしたものと、大屋全体をネットワークするプログラムに分類することができます。

特定の地区を対象にしたミュージアムプログラムを展開する地区を例えば大杉地区と明延地区とすると、これらの地区にはそれぞれ、養蚕農家群と鉱山遺構という特徴的なものがあり、これらを活かしたアート村拠点地区とします。これらは、2つのアート村拠点地区で「大杉ビレッジ」、「明延ビレッジ」と位置づけられます。

 大屋全体をネットワークするプログラムについては、多様な可能性が考えられます。例えば、大屋の特徴とも言える養蚕農家住宅と蔵や納屋、各地に残っている古い建物を活用するレトロミュージアムプログラムや、自然環境が豊かで、大屋川を中心とする谷の景観や山や樹木といった豊かな自然と、それを背景に生産される農作物に関わるプログラムなどを計画します。アート村がプロデュースし、多様な地域資源を活かしたミュージアムプログラムをオープンエンドに展開することができます。

構想の推進

アート村を実現していくための取り組みは、多彩な事業内容となっており、また旧大屋町並びに取り組みが集中する“大杉ビレッジ”の人口規模からしても容易に進められるとは言えないものであります。すなわち、昨今の自治体経営を取り巻く情勢からみてもすべてを公的な資金投入で賄うことは難しいと考えられ、また芸術家が主体となる現時点におけるNPO法人おおやアート村が事業推進を一手に担うには“経営的”な面での負荷が大きいです。
 よって、これらの事業を進めていくためには、下図に示すように運営主体とは別に経営主体をおくことが考えられます。

なお、これは一つの事業推進のありかたを示したものであり、他の案としては、経営主体をおおやアート村協議会の中に設置する方法、運営主体と経営主体が共同して事業を推進する方法(LLP:有限責任事業組合)、第3セクターといった運営・経営方法が考えられます。